聞け。我が人民よ。絶望してはならない。

将軍様

ウナサカ国際劇場にて映画「独覚者」のプレミア試写会が開かれた。

監督のタキノ・タケシ氏は取材陣に対し、
「いまのコメディアンはだめだね。みんな守りに入っちゃって。
70年も前の芸人がやったことさえ真似できないんだから。
俺なんて守りに入んないで、オネーチャンに入っちゃうんだから。」
とタキノ節を披露。

ゴールデンウィークに一般公開予定。

以下、主人公の独裁者「金 恩恩」が悟りをひらき、人民に説法する最期のシーンの台詞から抜粋。
独裁者


聞け。我が人民よ。

わたしは帝王たることをやめようと思う。
わたしは誰も支配したくない。征服も望まない。

わたしは勝利を目指して、今日まで奮闘してきた。
それは我々を脅かそうとするあらゆる悪夢を打ち倒し、
君らと誇りを共有し、ともに喜び合うためであった。

しかし、思い至ったのだ。
いや、ほんとうはもっと早くからこの疑問に気付いていたのかもしれない。
わたしの行ってきたことは、真の意味で君ら人民に誇りを与えたのか?と。

君らに豊かさを与えようと、わたしはときに敵を打ち負かし、彼らから戦利品を獲得してきた。
しかし、わたしの非力さゆえか、いつまでたっても君らを豊かにすることができなかった。
常に勝ちすすむことで、貧しさの地平は果て、豊穣の地にたどり着くと信じていた。
我々はそれに値する選ばれた民だと信じていた。
それを嘘だというつもりはない。

問題はそれが少し間違っていた、ということだ。
わたしが君たちにしたことを、あまねく世界にも向けて行うべきであった。
今わたしが世界の帝王にならんとしたとき、わたしが世界から搾取したものの大きさを痛感したのだ。

世界は不可分で、有限であった。既知のことではあるが、忘れてしまっていた。
世界は今、君ら以上に貧しく、飢えて、凍えている。
君らのために、君らの誇りのために、世界を助けたいのだ。

あれは幼い頃。厳しい冬の夜であった。
手のひらで雪が溶けたとき、わたしは雪の冷たさよりも自分の体温に気付いた。
そのとき、わたしは知ったのだ。世界の美しい秘密を。

雪の冷たさがわれわれ自身の温もりを気付かせてくれたように、
世界は美しい秘密でできている。
かの飛行機乗りも言っている。
「砂漠が美しいのはどこかに井戸を隠しているから」だと。

世界はときに絶望的ではあるが、絶望そのものではない。
小さな希望をていねいにひとつずつ拾い集めて、美しいパズルを解き明かそう。

世界が美しいということを、われわれで証明しようじゃないか。

われわれは遠くまで飛ぶ爆弾や、速い乗り物を手にいれ、
手のひらの上であらゆる知識が手に入り、したり顔だ。
常にコストパフォーマンスという虚像と競い、他者に馬乗りにならんと必死だ。

「許さない」ことを、「許せない」ことにすり替えて
たれかの責任を追及することに夢中になっている。

われわれは世界中で最もはやく、それら魂の貧困から抜け出し、
みちしるべとなるのだ。われわれはその意味において選ばれているのである。

人間同士の無理解と、自らに対する欺瞞とによって、
互いに遠く隔てられてしまった者同士を再会させられる、
そのような素晴らしい重力の法則、時空の解釈が得られる日はきっとくる。
われわれが武器を捨て、われわれ自身を許すことができれば。

我が兵士達よ、武器を捨てたまえ。

尊い本に、こう記されている。
「われわれが酸い葡萄を食む咎を、隣人たちのせいにしてはならない。
われわれの誠がいたらなかったのだ。」
それに気付けた今日こそが革命である。

われらが革命は遂げられた。
帰還せよ。
戦場に往き、還ってこられなかった何千、何万という同胞の分まで
愛すべき君らの妻を子を、ちからいっぱい抱きしめるのだ。

のこされたわれわれには「絶望禁止」の義務がある。
これが最期のダルマである。


※この記事はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
This is a work of fiction. The characters, incidents and locations portrayed and the names herein are fictitious and any similarity to or identification with the location, name, character or history of any person, product or entity is entirely coincidental and unintentional.

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